職場で健康診断があった。検診票をもって受付に行くと、「まずあちらで採血からどうぞ」と言われた。まさかいきなり初手が採血とは、心の準備ができてなくてドキドキした。
針も苦手だし、自分の血が試験管に入っていく様子も苦手だ。見てるだけで自分から血が抜けて貧血になりそうな気がするから、いつもできるだけ目を逸らすようにしている。採血ブースに行くと、試験管を3本渡され、こんなに抜かれるのかと思ってげっそりした。
高校時代、ワンゲル部(登山部みたいなやつ)の同期に、献血を趣味としている奴がいた。
血を抜かれてる間に無料でジュースが飲めて漫画も読めると言って、献血カードを眺めながら次に献血ができる日を心待ちにしている奴だった。お前もぜひすべきだとしょっちゅう勧められたが、何だか気が進まず行けなかった。
彼は無料で何かを貰うこと全般に詳しかった。
新入生が体験入部に来たとき、河川敷までランニングして喉がカラカラになった。するとそいつが「タダでドリンクがもらえるから帰りに寄ろう」と言いだした。
どこかでポカリでも貰えるのかと思って新入生と一緒に付いて行ったら、着いたのは近所のイオンのカルディだった。3人で体操服のまま甘い試飲コーヒーを貰って飲んだ。もっと喉が渇いた。
体験入部でカルディに寄るなんて新入生が逃げちゃうんじゃないかと心配だったが、結局その新入生は入部し、1年後には部長になった。
喉は渇いたが美味しかったから、それ以来僕は街でカルディを見かけると立ち寄り、そいつのことを思い出しながらコーヒーを貰うようになった。
採血されている間、目の焦点をできるだけ遠くの壁に合わせて、カルディのことを考えていた。あまりに試験管から目を逸らしすぎて、担当の人から気絶寸前かと心配されたが、今回はカルディのおかげで平気だった。

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